可逆不能な手術の術前診察は患者3人同時でしかも時間は2・3分

女性 30代

2010年手術

手術方法:Aと言う機械を使用したZレーシック

 

■現在の状態

2010年にレーシックを受けました。

術前に職種が事務職であり、近くを見る作業が多いことを

伝えたのにもかかわらず、直後から軽度(+0.5)の

遠視となり、手元~中距離の物が非常に見づらくなり

日常生活に支障を来たすようになりました。

近くの物は全くと言っていいほどピントが合いづらくなり、

物を見るためには目に多大な疲労が伴い、日常的に見る

テレビやパソコン等はありえないほど「無理をして見る」

状態なのです。

そのため、急激に視界が狂い、常に気持ちが悪く、

頭痛・吐き気・めまい・鼻づまり・足先のしびれ等の

身体症状が現れました。

それ以後ずっと強い眼精疲労に悩まされるようになりました。

 

後に施術クリニックとはまったく別の、眼位異常に理解のあるクリニックで

診ていただいたところ、外斜位が発見され、現在はプリズムの入った遠視処方の

眼鏡をかけています。

 

■レーシックを受けた理由

小学生の頃から視力が落ち、ずっと眼鏡・コンタクトを使用してきましたが、

25歳を過ぎた頃から特にドライアイがひどくなりました。

使い捨てレンズは3~4時間で乾き始め、乾燥してもなおレンズを入れ続けると

異物感や痛みのほかに目を大きく開けていることができず周囲に

「眠そうだね」と言われることが多くなり、自分の外見にコンプレックスを

持ち悩んでいました。徐々に眼鏡で過ごす日が多くなっていきました。

 

レーシックについては99年~2000年頃から存在を知っており、

ここ最近テレビで芸能人がたくさん受けていたり、インターネットで

多く目にするようになったので、興味を持ちました。  

 

■術前の診察について

手術前はインターネットで何度も検索を繰り返していましたが

悪い情報を目にすることがなく、目標視力に関しても当然のように

患者の希望を聞いてもらえるとものとばかり思っていました。

もちろん「過矯正」という状態があることなど知りませんでした。

そのため、適応検査の数日後、希望度数の相談はいつするのかと

クリニックにわざわざ電話で問い合わせまでしました。

クリニックは「当日先生と相談して度数を決めてもらう」と返答しましたが、

その時に希望度数には「完全矯正(1.5~2.0、軽度遠視状態)」と

「不完全矯正(0.8以下、いくつになるか保証はない)」のたった二つの

選択肢しかないことは一切答えてもらえませんでした。

 

診察の際、目の前に座った医師の第一声は「完全矯正でよろしいですか?」と

早口で言われました。私は初めて聞く言葉に「え?」と聞き返して

質問したところ、「完全矯正とは視力1.5、人によっては2.0を目指すことだ」と

言われ、「私は眼鏡で1.0程度にしていたので1.0~1.2程度が希望です」と

伝えました。

ですが「0.8以下になる不完全矯正もありますが、いくつになるか保証は

ありませんよ」と言うのです。

 さらに「レーシックは術後数年で少しずつ視力が下がるもの、あなたは

まだ若いので・・・」との説明で、完全矯正を勧められ、同意してしまいました。

この間、時間にしてわずか2~3分です。

 後に1.5を目指すということは、その人に可能な限り最大の遠方視力を

出させることであり、近視を通り越して遠視になるほど角膜を削られると

いうことだと知り、愕然としました。

今思うとあの診察は「完全矯正」を選ばせるような非常に誘導的なもので

あったと思います。

 

診察のやり方も疑問を感じるものでした。

第一に、私が受けたクリニックでの術前の診察方法は、患者と医師が1対1で

横に3組並んで話すのですが、その間には仕切りは無いのです。

3人一緒の診察で、しかも会計を済ませてしまっていることもあり、

自分一人が迷ったり質問していては後がつかえてしまうので、

慎重に考え、後戻りを決断することが非常に難しくなってしまうのです。

 
第二に、私は術前近視が重い方であり、日本眼科学会のガイドラインでは

インフォームド・コンセントが必要な患者です。

ですが診察では「なにか聞きたいことはありますか?」と質問するやり方で、

こちらから聞かないことは何も話してくれません。

 インフォームド・コンセントと言う言葉とは完全にかけ離れた内容で

あると感じました。


■術後の不具合に対する病院の対応

手術後に冒頭に書いたとおりの不具合が現れました。

術後10日後、あまりの体調不良にその時のリーダーという医師の診察を受けましたが、「失敗ではなく、皆がこれで満足している」という、私の訴えを無視した

答えでした。その後リーダーの医師が手術のため退席し、後を別の執刀医が

引き継ぎましたが、この医者の対応も同じでした。

この時の絶望感は言葉にできません。

 

術後1年たって再診で再度不調を訴えると再手術を勧められましたが、

明らかに危険なので断りました。

 

■再手術について

レーシックを受けていない方は再手術すればよくなるのではと

お思いになるかもしれません。

でも過矯正からの再手術は改善した方もいらっしゃいますが、

逆に症状が悪化した方もいます。


 再手術はレーシックと比べてさらに手術した人間の数が少なく、

技術的に確立しているとは言いがたい状態にあります。

それに再手術するにはもう一度角膜のフラップを「はがす」必要があるのですが、

これを何度も行なうとフラップ自体の接着が悪くなります

 (そうでなくとも一度レーシックを受けたフラップは一生完全には

くっつかないのです)。

 

さらに角膜を何度も削れば視界の質の劣化、たとえばコントラストの低下や

夜間視力の低下が激しくなっていきます。エクタジア・角膜拡張症、

緑内障などのリスクも高まります。

生身の体を削るため、何が起こってもおかしくありません。

 

それを一度手術を失敗し、しかもインフォームドコンセントも恐ろしいほど

お粗末だった病院に任せる・・・術後いくら不具合を訴えても

認めてくれなかった病院に・・・・そんな勇気は私にはありません。

100%良くなるという確証がなければ、これ以上目をいじる勇気は出ません。

もし今よりも悪くなり、さらに多くを失ってしまったら、

それこそ生きていられるか分からないからです。

 

■終わりに

レーシックは角膜をレーザーで蒸散させることにより角膜の形状を変化させ、

屈折異常を矯正する手術です。レーザーで削った角膜は再生しないので、

この手術をしてしまった後はたとえ地獄のような状況になったとしても

角膜を元の状態に戻すことはできないのです。


そのような可逆不能な手術で、術前にインフォームド・コンセントを

しなかったり、患者が他の患者を気にして慎重に考えることが

できなくなるような診察方法をとることは、患者の人権を無視した

詐欺的手法と言わざるを得ないのではないでしょうか?