2013年

12月

07日

レーシック後遺症のオーバービュー

レーシックの問題についてメディアの方からたくさんの質問をいただきました。

「その中にこの問題の本質は何だと思いますか」というものがありました。
以下、ボランティアスタッフから見た問題の整理を行います。
 
後遺症についてのオーバービュー
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まず、レーシックの問題点ですが、後遺症に関していうと問題点は以下の4つであると思います。
 
①屈折矯正手術で角膜を削ったことによる見え方の質の低下
②角膜を削ったときに発生するドライアイや角膜神経痛、目薬に関する知識の不足からくる緑内障、角膜の削りすぎによる円錐角膜などの症状。
③削りすぎによる過矯正(遠視)
④術後の近視の戻り
⑤屈折度数が急激に変化したことによる、両眼視機能不全
 
以下各項目を記述いたします。
 

①角膜を削ったことによる見え方の質の低下

被害者の会のページにこの件をまとめたページがあります。
 
「見え方の質の低下」
 
こちらにも画像を載せます。
少なくとも不正乱視やコントラストの低下、夜間視力の低下は角膜を削ったことが要因で起こっているため、「レーシック」をはじめとする角膜を削る手術の問題であると思われます。
 
こちらは永続的になりうる場合もあり、術前にしっかりしたインフォームドコンセントが必要です。「こういう見え方が永続的に続く場合もありますが、それでもいいですか?」と画像を見せながら説明し、それでも「了承します」という患者に手術を行えばいいと思います。
 
特にハロ・グレアや夜間視力の低下は高い確率で起こり、夜に運転できなくなる人もいるため「永続する場合もあり、夜間運転ができなくなることもある」と伝えるべきであると思います。
 
ちなみにこちらの方はレーシック業界も技術的に問題有りだと思っているらしく、削った後の見え方の質の低下を防ぐべくいろいろな論文が出されたりしているようです。
詳しくは「レーシック コントラスト感度」や「レーシック 高次収差」などで検索すると、レーシッククリニックがこれに対応すべく色々研究していたことがわかります。
 
患者への対応については、「見え方は個人の問題だから」「あなたの主観」「レーシックとはそもそもこういうものだ」と逃げられるケースが被害者の会では見られました。
もちろん術前のリスクの説明は非常に軽く「ハロ・グレアなどは半年で改善します」としか説明されていない場合が多いです。
 
 

②重度のドライアイ、角膜神経痛など

以下の写真は重度のドライアイとなった当会の被害者が1年で使った目薬の空き容器の写真です。

アメリカでは重度のドライアイのためショットガン自殺された方もいるようです。
角膜神経痛はシャンプーが目に入った痛みが24時間続きます(体験談2参照)。
 
角膜を削ったことが原因のこれらの症状は術前に患者に「こうなることもありますよ」というしっかりしたインフォームドコンセントがあると思います。
 
また、ステロイド目薬による緑内障などは手術後の治療ための薬剤が原因ですが、こちらは明らかに知識不足が原因ですので、医師側で後遺症情報の共有を行えばミスは減っていくのではないかと思います。
 
ちなみにレーシックなどの屈折矯正手術により処方される薬剤のリスクについては、下記サイトで薬剤師からのコメントが読めます。
 
近視手術の後遺症対策研究会(眼鏡士が運営しているサイト)
「近視手術で処方される薬の危険性」
 
医原性の円錐角膜についてですが、術後の角膜ベッド数の国際基準は250ミクロンであり、現在日本眼科学会のガイドラインでは10D以上削る場合は角膜ベッド数が基準値を下回る場合もありレーシック適応外なはずですが、多くのクリニックはこの遵守を行わず、しかも適応外であることすら患者にインフォームドコンセントゼロで手術してきました。この遵守を徹底させる必要があります。
被害者の会にも完全に適応外で手術され、円錐角膜で苦しんでいる方がおられます。
強度近視の方には「あなたは角膜を削る量が非常に多くなるため、レーシックは適応外である」と伝え、手術対象から外すべきです。
 
 

③削りすぎによる過矯正(遠視)

数値上は大したことがないように見えても、人によっては失職するほどひどい眼精疲労が起きている場合もあります。削りすぎという事態は避けられるべきです。
 
ただ、術後の矯正値については将来的にどうなっていくのか当の眼科医でさえ予測がつかないのが本音であると思います。散瞳薬を使って術前にチェックして正視になるように削っても術後どんどん遠視化していく人もいるので。この文章を書いている自分もおそらくは正視を目指して散瞳薬+オートレフでチェックされ手術された結果が+2の遠視なわけですから。
 
また被害を美容整形などのクリニックのせいにして片付けるのは解決になっていないと思います。もちろん美容整形クリニックは被害レポートで他を圧倒する数でしたが、大学病院で手術を受けて被害者になっている方もおられます。
 
そのため、この点に関しては患者に対するしっかりしたインフォームドコンセントが非常に重要であると思います。
すなわち眼科医は屈折矯正手術の際「できるだけ正視を目指して角膜を削るように努力するけれど、その結果100%臨んだ視力になるとは限らないし、ひどい遠視になる場合もある。」と患者にしっかり説明し、「それでも別にかまいません」と答えた患者にのみ手術を行うということです。
 
 
 

④術後の近視の戻り

原因はレーシックのクリニックでもよくわかっていないようですが、術後に近視に戻ってしまう場合があります。
神戸神奈川クリニックでは2~3%と書いてありますね。
 
神戸神奈川クリニック
 
この2~3%という数字の根拠はわかりませんが、少なくともネットを調べると「レーシック手術後に視力が戻ってしまった」という情報がかなり出てきます。
 
Yahoo知恵袋 レーシック後の視力低下について教えてください
 
教えてGoo レーシック再手術受けた人いますか
 
レーシックの再手術 視力回復JP レーシックの再手術を受けても平気でしょうか
 
 
クリニックは患者をきちんと追跡調査し、近視戻りの割合を調べた上で術前のインフォームドコンセントとして「手術してもまた近視に戻る場合が(おそらくかなりの確率で)ありますがよろしいですか?」伝えるべきであると思います。
 
また、視力が低下した場合再手術を無料で行うと宣伝している場合もありますが、そもそも強度近視の場合は最初の手術で角膜ベッド数の問題から再手術が不能になっている場合があります。このことも術前に患者に伝えるべきであると思います。
すなわち「角膜を削る手術の場合、術後に視力が低下する場合も(おそらくはかなりの割合で)ありうるが、あなたの場合は近視が強いので再手術が不可能である。それでも手術なさいますか?」と説明する必要があります。被害者の会のアンケートなどを見ると現在この説明は術前患者に全く行われていないようです。
 
最後に、当会では最初の手術で何の問題もなくとも、視力低下した後の再手術後に激烈に体調が悪化した患者さんもいらっしゃるので「再手術した結果何が起こるか眼科医としても予測がつかないがいいですか?」と言うことを眼科医は正直に患者に伝えるべきであると思います。
 
 

⑤屈折度数が急激に変化したことによる両眼視機能不全

これは飛行機に例えると(近視を遠方もよく見えるようにすることを例えた場合)、
『近距離用のエンジンが2つついた飛行機を遠距距離も飛べるように改造したら、
確かに遠距離は飛べるようになったけど、エンジン同士の連携が崩れて
まともに飛ぶことができなくなった』という状態です。
 
要するに人間の眼球は2つあるので、本来ならば対象は2つに見えるはずなのですが、
そうならないのは両眼が連携して対称認識しているからです。この機能を両眼視機能と言います。屈折矯正手術などで屈折度数が急激に変化すると(=近距離→遠距離用の改造で2つのエンジンの性能がいきなり変わると)、そのバランスが崩れて両眼で物を見る時に大変なストレスがかかったり(眼精疲労がものすごくなったり、眼痛が発生します)、物が2つに見えてしまうようになります。
 
 
 
 
屈折度数を変化させた結果起こる両眼視機能不全(=2つのエンジンでまともに飛行機が飛べなくなった状態)は実はレーシックに限らず白内障の手術や眼内レンズの手術で起こってきました。ただ、日本は欧米と比べて両眼視機能という知識に関して無関心な国だったため、手術後複視(物が二重に見える状態)になったり眼位異常が顕在化してきても「あなたの気のせいでしょう」と答えたり、そもそも異常を発見できないという場合が多かったのです。
 
「白内障手術後 複視」という検索ワードで検索すると、眼科がこの件で取り上げている文書が多く出てきます。
 
たとえばこのような白内障手術前の同意書があります。
この中の「手術後生じる可能性がありうる他の眼疾患があります」という項目に
「両眼視以上による複視」という項目があります。
 
レーシックのクリニックは術前術後ともに両眼視の検査をしない(というかできるだけの知識がない)ところがほとんどです。そのため両眼視機能がおかしくなってしまった患者は病院にいくら訴えても相手にされないことがほとんどでした。
 
しかし、被害者の会で術後に両眼視検査をした結果眼位異常を起こしている人の多さを見ると、術前術後に両眼視検査を行うことは、レーシック手術だけでなくそのほかのあらゆる目の手術を行う際も必要不可欠であると思います。
眼科医は両眼視機能について一定水準以上の知識、たとえば自分では異常は発見できなくても、せめ患者の気のせいと片付けずにほかの病院を紹介できるくらいの知識は持つべきであると考えます。
 
この点に関しては、とにかく厚生労働省に両眼視機能検査をもっと重視するように学会に働きかけたり、処置の際の点数を上げるなどして「処置して眼科医が報われる検査」にしていただければと思います。
現状の両眼視検査の点数は48点(http://shinryo-hosyu.com/shin2012/ika2012/ika2012d/ika_d270_2_d272.php)で、ほかの眼科手術の手術の点数が1000点くらいある(たとえば後発白内障の手術は6890点)ことを考えると、とても研究が報われる分野とは言い難いと思います。
医学部で検眼に対する学習が軽視される傾向になったのはこのためではないでしょうか?
 
また、日本眼科学会にも眼科手術の前後の両眼視機能検査の実施を手術のガイドラインに含むように、ガイドラインに追加していただきたいです。

まとめ

以上レーシックの後遺症を見てきたわけですが、レーシックの問題点というのは上記のような後遺症が発生する可能性について患者にきちんと説明せずに手術を行ってきたことであると思います。